セッション・ゼロとは?(RPGのセーフティツールも解説)
ダイスを振る前に、セッション・ゼロでみんなの認識をそろえておきましょう。話し合っておくべきことと、卓を誰にとっても楽しく快適に保つためのセーフティツールを紹介します。
セッション・ゼロとは?(RPGのセーフティツールも解説)
セッション・ゼロ(session zero)とは、キャンペーン開始前にグループ全員で集まり、本格的なプレイが始まる前にトーン・扱う内容・スケジュール・キャラクター・卓のルールについて認識をすり合わせる、事前の打ち合わせのことです。いわば「セッション1」の前にやる準備の会、と考えてください。ここではゴブリンと戦うことも、イニシアチブを振ることもありません。その代わりに、これからどんな物語を一緒に作っていくのか、そしてそれをどんな雰囲気にしたいのかを、みんなで合意します。
これは新しいTRPGを始めるうえで最も役に立つ(そして最も飛ばされがちな)プロセスのひとつです。うれしいことに、長々と形式ばってやる必要はありません。お菓子をつまみながら要点を押さえて話すだけで十分役目を果たします。
なぜ大事なのか
プレイヤーはそれぞれ、頭の中に自分なりのイメージを抱いて卓につきます。ある人は陰鬱なサバイバルホラーを思い描き、別の人は気の利いた掛け合いのあるヒロイックなハイファンタジーを期待している。セッション・ゼロをやらないと、そうしたイメージがキャンペーンの途中でぶつかり合い、結局誰かががっかりすることになります。
セッション・ゼロは、こうした期待のズレを未然に防いでくれます。共通のビジョンを設定することで、全員が同じものに対してワクワクできるようになる。そして、面倒な段取り面の疑問を先にすべて片づけておけるので、本番のセッションを実際のプレイにまるごと使えて、進行もスムーズになります。
ひとことで言えば、最初にちょっと準備しておくだけで、あとからずっと多くの楽しさが返ってくる、というわけです。
セッション・ゼロで話し合うこと
すべてを話し合う必要はありませんが、ここから選んで使えるしっかりしたチェックリストを挙げておきます。
- ジャンルとトーン: 軽快な冒険ものか、ザラついたダークファンタジーか、コメディか、それとも政治的な陰謀劇か。物語の感情的な基準線を決めましょう。
- テーマと扱う内容の境界線: どんな題材なら卓で歓迎されるのか、逆にどんな題材はNGなのか。(これを扱うためのツールについては後述します。)
- キャンペーンの種類: プレイヤーが自由に動き回り、自分たちで物語を動かしていくサンドボックス(sandbox/自由度の高い箱庭型)か、それとも明確な中心軸のある、よりガイド型の物語か。どちらもアリです。ただ、自分がどちらを回そうとしているのかははっきりさせておきましょう。
- キャラクター作成とパーティのつながり: キャラクターは一緒に作って、ひとつのグループとして行動する理由がちゃんとあるようにしましょう。共通の目的もない他人同士のパーティで始めるのは、なかなか厳しいスタートです。D&D 5eなら、開始レベル、能力値の決定方法(スタンダードアレイ、ポイントバイ、ダイスロールのどれか)、使用を認めるサプリメントについて合意しておく絶好のタイミングでもあります。
- スケジュール: どのくらいの頻度で、どのくらいの時間集まるのか。そして誰かが来られないときはどうするのか。
- 卓のマナー: スマホ、内輪話、見せ場の分け合い、ルールをめぐる意見の食い違いをどう扱うか。
- ハウスルール: 公式ルールへの独自の手直しのこと。5eでよくある例としては、側面攻撃(フランキング)のボーナスや、「ナチュラル1(クリティカルファンブル)」を出したプレイヤーに何らかの結果が生じるルールなどがありますが、これらはあくまでハウスルールであって、ゲーム本来のルールの一部ではない点に注意してください。
こうした決定事項は書き留めておくと役立ちます。Mini Krakenの共有メモやハンドアウト機能を使えば、グループで合意した内容を手軽に記録しておける場所が手に入るので、あとから「待って、自作種族(ホームブリュー)ってアリにしたっけ?」とセッションが脱線することがなくなります。
セーフティツール
セーフティツール(safety tools)とは、卓についている全員にとって内容が快適であり続けるよう、あらかじめ合意しておくシンプルなテクニックのことです。これは物語を検閲するためのものではありません。物語が、生身の人間にとって楽しいものであり続けるようにするためのものです。代表的なものをいくつか紹介します。
ラインとヴェール(Lines and Veils)。 ライン(line)は絶対的な「NO」、つまりグループが「これはゲーム中に一切登場させない」と合意した題材のことです。一方のヴェール(veil)は、存在はしてもよいが画面外で起こることにする、つまり詳細を描写せずにフェードアウト(暗転)させる題材のことです。これらは一緒に設定しますし、プレイを進める中で追加していくこともできます。
Xカード(X-Card)。 デザイナーのJohn Stavropoulosが広めた手法で、誰でもカードに触れる(あるいは手を挙げる、「X」と言う)ことで、今の場面を編集してカットしてほしい・飛ばしてほしいという合図を、理由を説明することなく出せる仕組みです。プレイは何ごともなかったかのように先へ進みます。スッとブレーキを踏める、手早く心理的負担の少ない方法です。
オープンドア・ポリシー(Open Door policy)。 誰でも、いつでも、どんな理由でも、誰にとがめられることもなく卓から離れてよい、という常設の取り決めです。休憩が必要? ドアはいつでも開いていますし、戻ってくればいつでも歓迎されます。
これらを組み合わせて使うことで、プレイヤーは一晩の進行を丸ごと止めてしまうことなく、手軽でお互いを尊重したやり方で内容の舵を取れるようになります。
セーフティツールは重いゲームだけのものではない
「セーフティツールはダークだったり大人向けだったりするキャンペーンのためだけのものだ」というのはよくある誤解です。そんなことはありません。これらはどんな卓にも役立ちます。明るくてコメディ寄りの卓にもです。
なぜか。それは、信頼を育ててくれるからです。違和感を伝えるための、はっきりした、誰も責められない方法があるとわかっていると、プレイヤーは肩の力を抜き、より大胆に物語へ踏み込めるようになります。皮肉なことに、よくできたセーフティツールはプレイを大人しくさせるどころか、むしろより勇敢で劇的なストーリーテリングにつながることがよくあります。セーフティツールは、全員がもっと自由に物語へ飛び込めるようにしてくれる、ささやかな投資なのです。
関連する用語
知っておいて損のない、近い概念をいくつか挙げておきます。
- レールロード(railroading)とサンドボックス(sandbox): 「レールロード」とは、ゲームマスターがプレイヤーをただ一本の決められた道筋へ無理やり進ませることを指します。「サンドボックス」は、プレイヤーに自分の進む方向を自由に選ばせるものです。
- プレイヤー・エージェンシー(player agency): プレイヤーの選択が、世界や物語にどれだけ意味のある形で影響を与えられるか、その度合いのこと。
- ホームブリュー(homebrew): 公式に出版されたものではなく、自分たちのグループが作った独自コンテンツ(モンスター、ルール、アイテム、世界観など)のこと。
- テーブルルール(table rules): マナーやハウスルールといった、その卓ならではのプレイをうまく回すための、共有された取り決めごと(社会的な約束ごと)のこと。
セッション・ゼロを行い、自分たちのグループに合うセーフティツールをいくつか選べば、次のキャンペーンを、しっかりと共有された土台の上から始められます。あとは、ダイスを振りにいきましょう。