どんなテーブルトークRPGにも、ちょっと違う仕事を担う一人のプレイヤーが必要です。ほかの全員がそれぞれ一人の主人公を操るのに対し、この人はその周りに広がる世界まるごとを回していきます。ゲームによって、ゲームマスター(GM)、ダンジョンマスター(DM)、レフェリー、キーパーなど、呼び方はさまざまです。
始める前に知っておいてほしい、いちばん大切なことがあります。GMはプレイヤーの「敵」ではありません。あなたは物語のホスト役です。あなたの目的は、みんなを打ち負かすことではなく、忘れられない冒険を届けることなのです。自分のことを、語り部とレフェリーと世界の創り手、そしてパーティの一番のファンを足し合わせた存在だと思ってください。
それぞれの役割を分解してみれば、この仕事はずっと身近に感じられるはずです。
まず、GMは世界の「声」です。
キャラクターたちがきしむ酒場や霧に沈んだ森へ足を踏み入れたとき、彼らが何を見て、何を聞き、何のにおいを感じるかを描写します。主人公たちが出会うNPC(ノンプレイヤーキャラクター)――おどおどした店主、轟くようなドラゴン、隅にたたずむ謎めいた人物――そのすべてをあなたが演じます。
雰囲気やテンポを作るのもあなたの役目です。ささやくような描写は緊張感を高め、場面をぱっと次へ切り替えれば、みんなが行動に移りたがっているときに物語をテンポよく進められます。これに演劇の学位はいりません。ちょっと声色を変えて、印象に残る細部をいくつか添えるだけでじゅうぶんです。
次に、GMはゲームを公平に保ちます。
プレイヤーが崖を飛び越えたい、衛兵に目をそらさせたいと言ったとき、ルールをどう適用するかを判断するのがあなたです。ダイスロールを求め、難易度を設定し、出目が何を意味するかを解釈します。ルールがはっきりしないときは、物語が止まらないように公平な裁定を下しましょう。
優れたレフェリーであるためのコツは、たいてい「一貫していて、えこひいきしない」ことに尽きます。
あなたはプレイヤーの「揚げ足を取る」ためにいるのではありません。全員が同じ公平なゲームを遊べるように見守るためにいるのです。
3つめに、GMは舞台を用意します。
セッションの前に、パーティが訪れそうな場所、出会いそうな人物、待ち受ける対立の構図をざっとスケッチしておきます。何が懸かっているのかも決めておきましょう――さらわれた友、じわじわ広がる呪い、二つの勢力が奪い合う宝、といった具合に。
ただし、ここで一つ秘密があります。プレイヤーは必ずあなたの予想を裏切ります。悪役と仲良くなったり、わかりやすい扉を無視したり、こちらが何も考えていなかった樽について質問したり。でもそれは「失敗」ではなく、むしろ素晴らしいことなのです。世界を創るという仕事の大きな部分は、その場でアドリブを利かせ、書いていなかったアイデアにも「いいね」と応えることにあります。準備はしっかりした土台を与えてくれますが、それを生き生きとさせるのはアドリブなのです。
4つめに、そしておそらく最も大切なこと――GMはテーブルみんなを応援する存在です。
優れたGMは、プレイヤーの選択がちゃんと意味を持つように、難所を組み立てます。目的はグループに「勝つ」ことではありません。終わったあとにみんなが語りたくなるようなセッションにすることです。
つまり、主人公たちの見せ場を後押しし、気の利いた作戦は成功させ、劇的な失敗も行き止まりではなく新たな展開として扱う、ということ。プレイヤーが思い切った行動に出たら、あなたが最初に抱くべきは好奇心です――「おお、どうなるか見てみよう」。完璧に打ち倒されたパーティよりも、楽しくて公平なテーブルのほうが、いつだって上なのです。
ここまで読んで「やることが多いな」と感じても、ひと息ついて大丈夫。すべてを一度にマスターする必要はありません。最初はこんなヒントを試してみてください。
準備を整理しておくのも助けになります。Mini Krakenのようなツールを使えば、メモ・配布資料・マップを一か所にまとめておけますし、オンラインで遊ぶときのためのバーチャルテーブルもあります。おかげで、紙をめくり回す代わりに物語そのものに集中できるのです。
GMという役割は、外から見ると気おくれするかもしれません。でもこれは他のどんなスキルとも同じで、一セッションずつ身につけていくものです。最初のゲームが完璧でなくても、まったく問題ありません。プレイヤーが覚えているのは、ルールのミスなんかよりずっと長く、みんなで笑った瞬間や、きわどい場面や、一緒に作り上げた時間のほうなのですから。
というわけで、小さな冒険を一つ用意して、仲間を誘って、まずはやってみてください。GMは誰にでも学べますし、テーブルはあなたを待っています。